「昼間は痛くないのに夜だけ痛む」
「夜痛くて冷や汗が出て眠れない」
「夜中に痛くて目が覚めてしまう」
など、五十肩や腱板断裂の手術後、夜間痛に悩まされる方は大変多く、睡眠を妨害される辛い症状です。
痛みがいつまで続くのかと不安になってしまいますよね。
夜間痛の症状を少しでも改善するために、夜間痛の原因や対処法について解説いたします。
目次
夜間痛の原因
夜間痛の原因は、十分に明らかになっていません。
しかし、色々な説が研究によって明らかになってきているので、ご紹介します。
原因①:寝る体勢が影響する
体を起こしている時、肩は体にぶら下がっている状態です。
そのため、腕全体の重みによって、肩の中の隙間が広がっています。
隙間が広がるということは、肩の中の様々な組織への圧力が少ない状態を示します。
しかし、仰向けや横向きで寝ると、体を起こしている時に比べて、腕全体の重みが減ります。
すると、肩の中の隙間が狭くなり、組織への圧力が多くなってしまいます。
そのため、組織への圧迫が強くなり、痛みが生じてしまうのです。
また、別の見解もあります。
体を起こしている時、肩は心臓よりも高い位置にありますが、仰向けになると肩は心臓と同じくらいの高さになります。
仰向けになることで、血液の循環として老廃物が肩付近に集まりやすくなり、痛みを生じてしまうのです。
五十肩の場合、夜間痛を発生しやすい人は、「糖尿病がある」「年齢が低い」「発症してからの期間が短い」「肩屈曲できる範囲が狭い(前方に腕を伸ばして上に挙げる)」という特徴があることが明らかとなっています。
原因②:皮膚の温度が下がる
健康な肩と腱板断裂の肩の皮膚温度を比べた研究があります。
この研究によると、健康な肩と腱板断裂の肩の両方とも、寝てから徐々に温度が低くなり、夜間から早朝にかけてさらに低くなることが明らかになっています。
夜間痛は、皮膚温が最も低い深夜から早朝に多いのです。
原因③:夜は過敏になりやすい
日中と違って夜は静かで刺激が少ないため、痛みに注意がいきやすくなります。
他の事で紛れていたのに、夜は紛れるものがないので痛みに敏感になってしまいます。
「痛くて眠れないけど寝ないといけない」「いつまでこの痛みは続くのだろう」と焦る気持ちになり、余計痛みに集中してしまうのです。
夜間痛の対処法
まず、夜間痛はずっと永遠に続くものではないので、安心して下さい。
しかし、正しい対処をしておかないと悪化してしまう場合もあるので、少しでも早く改善するために、3つの対処方法をご紹介します。
対処①:痛くならない寝方にする
夜間痛の対処として、寝方は最も重要です。
とはいえ、寝方を気にし過ぎるあまり、眠れなくなってしまう方もいます。
そこで、寝返りしても安心な寝方をご説明します。
まず、腕が背中よりも後ろにいくの(伸展)を防ぎます。

仰向けで腕の下にクッションを敷きますが、この時、肩の下だけにクッションを敷いてしまうと肩の前側に痛みが強く出てしまうので、注意が必要です。
必ず、腕全体の下に敷くようにして下さい。
しかし、これだけでは内に捻れる(内旋)角度が強くなり過ぎてしまい、肩の後側が痛くなります。

そこで次に、お腹の上に大きくて軽めのクッションを置き、腕で挟みます。

大きめのクッションだと、寝返りをしても外れてしまうことが少ないためです。
どうしても外れる不安がある場合は、クッションを軽く手に紐でくくると固定できます。
これでも痛みが強くて改善されない場合は、体を少し起こしてみて下さい。
座って寝るのは眠りにくいので、肩が心臓よりも少し高くなるくらいの角度で起こすと良いでしょう。
対処②:冷えを予防する
皮膚温が下がると夜間痛が生じやすいため、冷えを予防することも大切です。
冬はもちろん、夏のエアコンによる冷えは、夜間痛を引き起こしやすくなります。
布団を肩までかけたり、タオルを巻いて寝るなどの工夫が必要ですが、寝ている間に肩が丸出しになっていることも少なくありません。
ドラッグストアに売られている「ゆたぽん」という長時間温かさを保持できるものなどがお勧めです。
ただし、発症してすぐの時期や手術直後、リハビリ直後に温めてしまうと痛みが強くなってしまうため、この時期は冷やすことが必要です。
対処③:薬に頼る
どうしても痛くて眠れない場合は、薬を服用することが勧められています。
中には、頑なに痛み止めを飲まない方や、効かないからたくさん飲む方がいるのですが、これは良くありません。
頑なに痛み止めを飲まずにいると、筋肉がどんどん固くなってしまい、痛みが長引いてしまうリスクもあります。
逆にたくさん飲んでしまうと、副作用による様々なリスクもあるため、用量を守ることは必須です。
まとめ
夜間痛は良くなったり悪くなったり、リハビリが進むごとに一時的に痛みが増す場合もありますが、これは着実にステップアップしている証です。
ご紹介した夜間痛の対処法が少しでも参考になれば幸いです。
引用文献
1.腱板断裂患者の夜間痛について- 術前・術後の肩峰下滑液包圧の変化-
2.鏡視下腱板修復術後に生じる夜間痛に対するアンケート調査
3.肩関節周囲炎における夜間痛の発生に関わる背景因子について
4.肩皮膚温の日内変動と夜間痛との関連
5.肩関節肢位の違いによる肩周囲血流変化