「腱板断裂の手術後、肩が固くて思うように動かせない」
「手術していない方の肩と同じくらいまで動くようになりたい」
「肩の違和感を早くなくしたい」
など、肩の動きを早く改善して元通りになりたいと思う方は多いと思います。
関節を動かすためには、「柔らかさ」と「パワー」が必要です。
どちらか1つでも欠けると、正しくバランス良く動かすことができません。
この記事では、「柔らかさ」を改善するために、肩の動く範囲を広げる自主トレーニングについて詳しくご紹介致します。
※「パワー」の改善については“腱板断裂の手術後リハビリ:自主トレーニング【基本の筋トレ編】”の記事をご参照下さい。
目次
腱板断裂術後のリハビリ -代償動作について-
代償動作とは、関節の動きがまだ不十分なために、自然と他の部分で代償しようとして起こる動きのことを示します。
◉代償動作の例1
椅子に座って、背をもたれずに足を挙げるとします。
健常な場合は体幹が座面と垂直な状態のまま挙げることができますが、腹筋が弱い場合や、股関節が固い場合には、体幹を後ろに倒すこと(代償)で結果的に足が挙がる状態になります。

◉代償動作の例2
腕を横に挙げるとします。
普通、体は真っ直ぐのまま腕だけが横に上がるべきですが、肩の動きが乏しい場合、体を横に倒すこと(代償)で結果的に腕が上がるという状態になります。

腱板断裂術後で肩を動かす時、代償動作を伴わない方はいません。
まだ腱板の機能が回復途中で、動く範囲も完全ではないので、代償動作を伴うのは普通。
ただ、自分で代償動作をコントロールするのは難しいので、リハビリで担当療法士が動かし方のコツを伝えながら誘導し、フィードバックをしながら、正しい動かし方を学習していきます。
では、リハビリ場面でなく自主トレの場合、代償動作をどうすれば良いかの詳細は、これからご紹介するそれぞれのストレッチでご説明します。
腱板断裂術後のリハビリ -肩関節ストレッチ-
本題に移り、腱板断裂術後の肩関節ストレッチについて、注意事項と方法を説明します。
机、椅子、タオルをご準備下さい。
回数の目安はそれぞれのストレッチを10回×3セットですが、できる範囲で大丈夫です。
■肩関節ストレッチで注意する点3つ
①過負荷にならないように、痛みのない範囲で行うこと
筋トレも同様ですが、勢いよく動かしたり、振りを使って動かさないようにしましょう。
また、動く範囲を広げようと無理に引っ張ったり押さえたりするのも避けましょう。
②代償動作に気を付けること
代償動作は伴わないように、詳細はそれぞれのストレッチでご説明します。
③肩甲帯の運動を行った後に行うこと
肩関節の周りには、首や肩甲帯(肩甲骨の周り)、鎖骨や胸や背中などがあり、それらの組織が固かったり弱かったりすると、肩関節も動かしにくくなります。
無理に動かすと肩関節だけでなく、首や肩周りのコリや腕の痛みを伴う場合もあります。
そのため、肩関節ストレッチの前に、まず肩甲帯の運動をしておくことが大切なのです。
※肩甲帯の運動については“腱板断裂の手術後リハビリ:自主トレーニング【肩甲帯の運動編】”の記事をご参照下さい。
■ストレッチ1:挙上
前方の机にタオルを置き、椅子に座ります。
可能な範囲で良いので、タオルを両手で押さえて前方に滑らせます。
ゆっくりと元の状態に戻ります。
また、痛みがない場合は立って壁で行うこともできます。
※代償動作:背中が丸まったり、肩がすくまないようにしましょう。


■ストレッチ2:内外旋
脇を閉じて肘の位置を固定した状態で、机の上のタオルに手を置きます。
肘を軸にして、タオルを外側に動かします。
これ以上外側に動かせないというくらいまで動かしたら、次は内側に動かします。
※代償動作:胸が開いたり、肘が体の後ろに引けないようにしましょう。

■ストレッチ3:伸展内転
体の後ろで、肘を伸ばして両手でタオルを持ちます。
元気な側の手の方向にタオルを引っ張りましょう。
ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
※代償動作:体幹が左右に動かないように行いましょう。

■ストレッチ4:伸展内旋
タオルを背中に回し、両手で持ちます(元気な側の手が上にくるように)。
元気な側の手でタオルを上に引っ張りましょう。
肩の前側が伸びるのを感じたら、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
※代償動作:体が前に傾かないようにしましょう。

痛みの状態や動き具合によって自主トレを選択
腱板断裂術後の肩関節ストレッチについてご紹介致しました。
自主トレの必要性、正しい方法で行う大切さなど、ご理解頂けたと思います。
人の感じる痛みは主観なので、個人差があります。
そのため、どのタイミングで何の自主トレをどのくらい行えば良いかは、痛みの状態や動き具合によって個人で異なります。
主治医や担当療法士と相談しながら進めて行きましょう。
何か一つでも参考になれば嬉しいです。